エール弁当
まだ夜も明けない時間から私は弁当を作った。
誰かを元気づけたい時、私にはこれしか出来ないから。
先ずはちゃんと食べさせる。

5年前、土地のものを使い、おばあちゃんが作っていた様な手作りで、
田舎味のきんぴらごぼうやポテトサラダ、焼きたての玉子焼をお客様に出したい!
と言う思いを受けて私は召喚された。
私はまず
「そんなこと出来るの???このホテルが?今やってること真逆なことなのに」と、
まあ、現実化するのは、ほぼ無理だろうから、とりあえず2ヶ月だけならと
入ってみる事に・・・。言うは易しであること、今の環境ではまず出来るわけがない事、
かなりな投資と社員教育が必要な事など、理想と現実とのギャップを
思い付くだけ並べ立てた
けれど、めげない心がそこにはあった・・・2か月のつもりが気がつくともう5年目。
今は当たり前のように
土地のものを使い、きんぴらと焼きたての玉子焼を作ってる。
今月は
きゃーめと湯引きレタスの酢ぬたまである。
きゃーめとは方言でサカタサメのことフカの湯引きです。
それに地元特産の八斗木ネギとレタスを湯通しし酢味噌で。
酢味噌もちゃんと作ってる。見た目?もちろん地味(笑)インスタ映えはしません
でも、今では意外と食べる機会が少なくなった地元の味で超美味しい。
こんな料理に変え始めた頃は、なんか質素になっただの、味が落ちただのと
色んなコメントが連ねられ続けた、既製品の方が見た目も鮮やか味も濃くて
美味しいものを食べたような気になるのはわかるが、手作りにはかなわないはず
と思っても、皆にそう簡単に伝わることはない。
伝わってないコメントを見続ければ、さすがにフツーは心折れるだろうし、
やっぱり止めようかなと思うだろけど。
私たちが、作っているきんぴらや玉子焼は必ず
お客様の癒やしに繋がる!
わかってもらえるお客様は必ず増えてくると信じ、作り続けた。
そんな惣菜位、簡単でしょう?と思うかもしれないが、
現代ではイチから全て手作り、しかも安心安全で
しかも一度に数百人のお客様に美味しく提供するのはとても難しいことである。
きんびらや卵焼きは真空された物を仕入れれば、簡単で安く済む
温め直して封を開けて盛り付ければ、面倒はなく、
そこそこ美味しく提供できるものがある時代。
でも手作り、ばあちゃん味の美味しさで、安心安全なきんぴらを出す事にこだわった。
それに拘ると、信じられないくらいの設備投資をしなくてはいけなくなるが
きんぴらと卵焼きの為にそれもやった。
いつしか私は、このReブランディングに大きく関わる事となり、
いつしかこの思いに応えるために
私に出来ることは何かと考え動く自分になった。
これも言うなれば、きんぴらと玉子焼きのパワーだ。
昨年よりのコロナ禍、先行きの見通せない中。
ホテル一番の売りであった豪快バイキングをお客様の安心安全を最優先する為に
止める事を即座に決断、設備を改装し料理提供のスタイルを変更した。
手間、人手は倍必要になったが、出す料理への思いは変わらず、
しかも豪快さが無くなる分、品数を増やし、お客様に向かった。
スタイルが変わっても自分たちが作っている料理は目に見えないパワーを
お客様に与え、癒やすという自信が、この時、皆の心にあったのだろう、
手間が増え大変なのに不平不満を言うスタッフは、一人もいなかった。
毎日毎日器用とは言えないながらも実直にお惣菜を作り続けてお客様を迎える。
業界的に言うと、中途半端に手作りすると、危険性が高くなる、
だからそれらを回避するために食品工場で作られた既製品に手が伸びる。
それでも自社で設備を整えて既製品は使わないと決めた。
なので衛生管理も感染症に関しても勉強会、講習、シュミレーションを
これでもかと言うくらい行ってきた。これはコロナに関係なく
その前からやっていたこと。コロナ対策は国が定める以上の対策もとった。
それでも避けられない事がある。しかしそれも想定していた。
事が起きたその日から皆、想定通りの配置について対応にあたった。
私が到着した時には既に、コールスタッフは千人を超えるお客様対応に奔走し、
ホールスタッフは、エプロンをはずしスーツの制服に着替え、
いつも持っているトレーを受話器に変えてコールスタッフをヘルプ。
電話なのでエプロン姿は見えないのにスーツだった。
これがこのホテルのお客さまへの礼節。
他のスタッフも制服を作業着に変え、消毒液の染み込んだ真っ白の雑巾を手に
黙々と全館内をふきあげていた見事な連携プレー。その姿に感動し、
私は一人ひとりハグ&キッスを贈りたいと申し出たが、
「それは結構です!」と丁重に断られた。だよねぇ~
事故対応したスタッフ達もホテルマンとして懸命に人命救助を行った。
事後処理も危険因子を館内に微塵も残さないよう見事な処置でした。
多分指揮を取らないといけない私が一番アタフタしていたのではなかろうか。
一番安堵したのは、ホテルへの誹謗中傷が全く無かったこと。
電話対応の合間にかかってくるのは励ましの言葉ばかりだった。
「再開したらまた行くから頑張って」と、その有り難さに涙止まらずの数日。
本当にありがたかった。
このホテルは、今までと真逆なことにチャレンジし、時代の流れ、要求に向き合ってきた、
チャレンジ精神と逆境に立ち向かう覚悟がある。
これまでのイメージをここまで変えるのはよほどの信念と覚悟がなければ
できることでは無いが、やり遂げてる。
これからもそのスタイルと思いは変わらず続けて行くだろう。
これだけの事をやり遂げて来た人達なので頑張れる。
ここのばあちゃん味を楽しみに泊まりに来て下さるお客様も多くなってきた。
口コミでも料理は高得点をもらえるようになってきた。
争奪戦のように料理を取って
味わう間もなく食事しないといけなかったあのバイキングはもうない
ちゃんと土地の物、ばあちゃん料理の味を楽しめるようになった。
きんぴらと玉子焼きのパワーは、間違いなかったと実証された。
PS
このホテルには土地のものでこしらえる美味しいきんぴらや白和えや
ポテトサラダや玉子焼きがあります。
でも見た目は地味でインスタ映えは??です。
客室には、ゆっくり寛げる椅子や寝具がありますこれは、なかなか良いです
コウセイシロタニのデザインセンスと心が注入されています。
露天風呂からは、目下に橘湾と熊本を一望できます、これもなかなか良いです。
なんとなく肩の力がぬける位のおばあちゃん的優しさをお渡しできるよう
頑張ろうとするスタッフがいます。プロフェッショナル感は薄いかもしれませんが
頑張ってます。
ここに書いたことが、私から見えているこのホテルのこれまでと今です。
これからも皆様には是非応援してあげてほしい。
館内やスタッフに、危険因子は、ありません。安心して
お越しいただけるよう、これまで以上の対策を整えようとしています。
現実、これ以上何が出来るのかって言うくらい今もやってるけど。
私はだんだん明るくなっていく台所に立ち、彼らが信じている、
きんぴらと玉子焼きのパワーを満載にした弁当を彼らの為に作る。
この弁当のパワーを彼ら同様私は信じているから。
最後に一言報道よ!アホな出し方すなボケっ!
こうやって皆戦っとるんじゃぁ~!
自分が一番関わってる局が一番無礼でアホだったことに落胆してる。